ビルの省エネ指南書(75)

 空調のチューニングポイント

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

電力のチューニングポイント

稼働電力と待機電力(3

9、無線LAN親機
 家庭での使用が主であるが、稼働時と待機時の区別が難しいのが無線LAN親機である。
パソコンやスマートフォンを使って通信中であれば稼働中であり、通信中でなければ待機中となるが、稼働中と待機中の区別がつかない。そこで夜間等で全く通信することのない時間を待機中とする。
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定格消費電力が10Wの無線LAN親機の消費電力量を49時間測定すると320Whであった。320Wh÷49h≒6.53W
稼働中の電力としては小さいが、待機電力としては大きな電力である。
パソコンやスマートフォンを使っている時間帯も夜間でパソコンやスマートフォンを使っていない時間帯も消費電力量は変わらない。
動画等を見れば最大で10Wになるのだろうが、常時通信していない状態ならば、稼働電力も待機電力も殆ど差が出ないということである。
それならばパソコンやスマートフォンを使っていない時間帯は節電タップで切っておけばよい。定格消費電力の大きな無線LAN親機ならばさらに待機電力の節約となるはずだ。

10、テレビ、HDDレコーダー
 TVはビルよりも家庭での節電が主だが、主電源SWか節電タップ利用で簡単に待機電力を無くすことができる。待機電力を減らす省エネモード設定もあるので併用すればよいだろう。
取扱説明書には省エネモードで0.1Wという待機電力になっているほど省電力である。
TVは見ている時の電力消費が多いが、部屋の照明を暗くすれば、画面が暗くても見やすくなるので、照明とテレビで二重の節電効果になる。
液晶テレビを32型⇒42型⇒60型と数年毎に大画面へ買い替えたとしても、消費電力は逆に少なくなり待機電力も減っているので、僅かな待機電力を気にするぐらいならば、早めに買い替えた方がよいのかもしれない。
HDDレコーダーも待機電力はあるが、節電タップを使う訳にはいかない。テレビと同じように待機電力を減らす省エネモード設定があるので利用すれば2W以下である。
電源ON時の立ち上がりが少し悪くなるが、頻繁にON・OFFを繰り返して使う製品でもないので、問題はないだろう。

11、電気保温ポット
 電気保温ポットの保温中は待機電力なのか、稼働時と待機時の区別が難しい。本来は機器を使用していない時に電力を消費するから待機電力なのだが、電気保温ポットの場合は考え方を変えて、全くお湯を使わない時間帯であれば、その時間帯の保温は待機電力とする。
湯温が下がれば自動で通電をして、いつでも使えるようにお湯を温める。この保温のための電力はお湯を頻繁に使うのならば稼働電力になるのだが、お湯を使用することがないのに保温しているのであれば待機電力とするのだ。
接客用として必要であっても、常時満水状態にしておく必要はない。お湯の量は少なくてもよいはずだ。沸いているお湯の量が多いほど放熱も多いが、半分の水量ならば放熱も半分で済む。
カップ1~2杯のお湯ならば、水を入れて数分で沸くはずだ。普段は電気を切っておき、横に水を入れた容器を用意しておけばよいだろう。必要な時に必要な量だけ沸かすのだ。
お昼休みにお湯を使い、13:00に満水にするとどうなるだろうか。何台も電気ポットがあるビルならば昼休み直後の13:00~13:30がデマンドピークの時間帯になってしまう。
昼休みにしかお湯を使わないのであれば、その時だけ通電して、あとはコードを抜いておけば、昼休み後のデマンドピークも回避できるだろう。
一番の問題は終業時だ。お湯が残っていれば、無駄な電力を消費したことになってしまう。
終業時に空になる使い方がベストなので、お湯の使用状況を調べたうえで、終業前に使い切れる量のお湯を沸かしておけば、無駄も最小限になるだろう。家庭でも夜間にお湯は必要ないので、就寝時間までにはお湯を使い切って、コードを抜いておきたい。
電気保温ポットはお湯を使用しない時間帯の保温が非常に大きな待機電力になるのだ。

12、扇風機
 扇風機は台数も多く、コードを差したままにしていることが多い。ビルでもよく使われているが、待機電力を気にしている人はいるだろうか。
昔の扇風機はスイッチが機械式のため待機電力の心配は無いが、最近の扇風機は電子式のスイッチであり、リモコン対応の扇風機も多い。当然に待機電力があるはずだ。
リモコンの無い扇風機の待機電力を測定すると5時間で10Whだったので2Wである。
リモコンの有る扇風機は25時間で50Whだったので2Wである。リモコンの有無に関係なく2Wだったことになる。これはテレビよりも大きな待機電力である。扇風機はテレビのように主電源スイッチがないので、コードを頻繁に抜くよりも節電タップの利用が効果的である。
テレビの待機電力を気にする人は多いが、それよりも扇風機の待機電力を気にしたほうが節電になることを知っている人は少ないだろう。

13、温水便座
 温水便座もビルの場合は台数が多いので、節電効果は高いと思われる。温水温度も便座温度も水の勢いも最低限で十分である。
温水温度が最も電力を消費するので、利用者が勝手に設定を変更しないように、設備員が設定を監視する管理体制が必要だろう。

14、節電タップの消費電力
 100円ショップで買える節電タップにはパイロットランプが点灯するものがある。
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スイッチONにしてネオン管の電力を測定すると34時間で10Whであった。0.294Wである。
2,000時間/年ONであっても約0.6kWh/年。
6,760時間/年をOFFにして待機電力を節約したほうが、節電効果が期待できるだろう。
待機時にはOFFとなるので、パイロットランプは待機電力ではなく稼働電力になるが、点灯が消し忘れ防止になるので、パイロットランプの稼働時電力量を考えるよりも、節電タップとしての利用方法を考えた方が効果的である。

15、テーブルタップの消費電力
 LEDのパイロットランプが1個点灯する、雷サージ防護機能付きテーブルタップを測定すると60時間で10Whであった。0.166Wである。
ネオン管のパイロットランプよりは、電力が半分近くも少ない結果となった。
8,760時間/年通電したままでも1.46kWhの電力消費ならば、雷ガード機能としてだけで考えても効果的である。
待機電力対策として節電タップ等を購入するならば、スイッチはLEDのパイロットランプ付き又はランプのないもの、そして雷サージ防護機能付きのものを購入すればよいだろう。