ビルの省エネ指南書(20)

空調機のチューニングポイント〔其の2〕

加湿(1)

1、加湿と省エネ

暖房時の加湿は水の気化熱が温度を下げる要因となって暖房負荷になるため、加湿をしない方が省エネになると思われている方も多いだろう。しかし省エネのためだからといって、加湿をおこなわなければビル内の湿度は40%を維持できなくなる。たとえ省エネのためであっても空気環境を適正に維持できないようなことがあってはならないので、ビルメンテナンスに携わる者としては、加湿をおこないながらも暖房負荷の削減に努め、空気環境も基準値を保てるように努力する必要がある。

外気条件が同じで室内湿度を一定に維持するならば水の蒸発量は同じである。水の蒸発量が同じならば気化熱量も同じになる。気化熱量が同じならば暖房負荷も同じである。よって湿度設定を低くする以外に暖房負荷を減らすことはできないと思っているかもしれないが、この考え方には間違いがある。ここがポイントなのだ。

2、 加湿方式

ビルの加湿方式としては主に次のような方式が用いられている。

写真-1 スプレー式

スプレー式は写真-1のように加圧ポンプを使って圧力を上げ、ノズルより水を噴霧して蒸発させる方式である。この方式はノズルが詰まることであるので、定期的な分解整備が必要となる。チューニング次第では最も大きな省エネと節水が期待できる方式である。

写真-2 滴下式(浸透膜式)

滴下式(浸透膜式)は写真-2のような浸透膜の上部より水を滴下させながら、浸透膜を通過する空気により蒸発させる方式である。スプレー式に次いで省エネ効果が期待できる方式であり、チューニングも簡単だ。

写真-3 蒸気式

写真-3の右下にあるのが蒸気加湿用のスチーム配管である。蒸気式の加湿はボイラー等の熱源があるビルに限られるため、ホテルや病院で主に採用されている。

空調機内で水を気化させるわけではないので、蒸気加湿は加熱となる。加湿が過熱の原因となるので、温水を使用した暖房では循環温水の温度と流量を極力抑えた暖房を行いたい。湿度設定が高過ぎると蒸気加湿だけで室温が上がり、冬なのに外気冷房しなければならなくなる場合もあるので注意が必要だ。