ビルの省エネ指南書(35)

照明のチューニングポイント〔其の6〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

照明のチューニングポイント(6

照明制御システム(2

4、廊下の照明

どのビルも全ての廊下照明を点灯させていることはないだろう。外光が入るならば消灯状態であり、暗い廊下でも半灯にするのは常識となっている。

スイッチをONにすると全灯となる廊下の場合は、1個置きに管球を間引きして半灯にしているビルも多いが、照明制御システムがあれば半灯の設定が簡単にできる。

写真-8 壁スイッチ

写真-8の壁スイッチにはエレベーターホールと2箇所の廊下があるので、半灯のスイッチが合計6個となる。この壁スイッチには3個のスイッチにシールが貼っている。シールを貼ると自然と貼ったほうのスイッチだけをONにするようになるので全灯になることがなくなるからだ。

半灯のスイッチは片方だけを点灯させればよいので、半灯のどちら側の半灯で点灯したほうがよいのかを実際の点灯状態を見てから判断してシールを貼ったほうがよい。同じ半灯であっても照明位置がずれると照度が必要な位置を照らさない場合があるからだ。

5、全灯と半灯

写真-8の壁スイッチは、以前は2箇所の廊下共に全灯スイッチがあり、その下に半灯スイッチが並んでいた。「全灯」・「半灯」・「半灯」の3つもスイッチがあったのだ。これではどのスイッチをONにすればよいのか迷ってしまい、それが無駄な点灯にも繋がってしまう。そこで「全灯」を削除して「半灯」・「半灯」にしてシールを貼ることにした。このようにしてスイッチの配置が自由にできるところが照明制御システムの特徴だ。

「全灯」を2個削除した代わりに「階段」の照明を追加して、あと一つはブランクにした。

階段照明スイッチは各階の階段位置にあるのだが、この階段位置にだけ、壁スイッチに空きスイッチスペースがなかったので「階段」を割り当てることができなかったのだろう。

階段の踊り場には非常灯が常時点灯しているので、階毎にある照明は必要な時だけ点灯させればよいのだが、他の階で点灯させてからこの階に来るとスイッチが無くて消灯させることができないのだ。このような訳でこの階段位置からは階段照明がON/OFFできなかったが、壁スイッチに「階段」を割り当ててからは無駄な点灯もなくなった。

不必要なスイッチの割り当てを削除すれば無駄な点灯がなくなり、必要なスイッチの割り当てを追加しても無駄な点灯がなくなるのだから、ビル内全てのスイッチにおいて無駄のないON/OFFができるように照明設定の見直しが大切となる。

6、設定作業

無駄のない設定にすればよいと簡単に口では言っても、実際にこれを行うのは大変な作業である。

照明制御盤のスイッチを一つだけONにしてから、どの照明器具が点灯しているのかを確認しなければならないが、他の照明が点灯していたら見分けがつかないので、全ての照明が消灯している時でなければ点灯の確認作業ができない。

私の場合は正月休み期間を利用して確認を行った。

一日中、誰もいない日は正月休み期間中しか無かったからだ。

照明制御盤のスイッチを一つだけONにして、

照明スイッチON⇒点灯照明確認⇒照明OFF。

そして次の照明スイッチONというように、照明制御盤のある部屋と点灯している照明の間を何百回も往復して点灯照明とスイッチを確認していった。そして、各所にある壁スイッチのスイッチ一つずつに、このスイッチをONにした時にはどの照明が点灯するのがよいのかを考えながら、照明制御盤のスイッチを割り当てていったのだ。