ビルの省エネ指南書(23)

空調機のチューニングポイント〔其の5〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

加湿(4)

9、滴下式

滴下式とは写真―4のように上から滴下する水が膜に浸透しながら蒸発する加湿方式だ。

 

写真―4 空調機の加湿用浸透膜

あるビルで加湿運転している空調機の浸透膜が見えるように点検口を開けて確認したところ、かなりの量の水が蒸発せずに浸透膜下部より落下して排水口に流れていた。

 

写真―5 空調機内部の排水口

写真―5のように排水口の周囲が濡れているのが蒸発しなかった水であるが、多分この水は暖房給気温度に近い水温であろう。

写真―6の加湿用給水栓を調べたところ全閉から全開までが9回転で殆ど全開の位置に調整されていた。これを全閉にしてから徐々に開いていったところ、半回転開けても水が出なかったが、これは水栓の遊び部分であろう。それから1/4回転開けると水が流れてきた。

全閉から僅か3/4回転開けただけであるが、これだけの給水量でも水は完全に蒸発せずに浸透膜下部から垂れて排水されていた。1/4回転開ではこれ以上閉める訳にもいかず、外気湿度によっても蒸発量は変わってくるので、この程度の排水量は仕方がない。

 

写真―6 加湿用給水栓

給水量の違いを実感するために家庭の水栓を1/4開けたときと全開にしたときの水量を比較すれば、この給水量の差がどれだけの日使用量になるのかは想像できるだろう。

給水栓全開での無駄な垂れ流し状態が見えているならば誰でも無駄だと思って給水栓を絞るだろうが、運転している空調機の加湿状況は空調機に点検口がなければ見ることはない。

停止中となると加湿も停止しているため気が付くこともないのである。

10、4台の加湿チューニング効果

11台ある空調機の内4台が滴下式である。この4台の加湿用給水栓を調整したが、室内湿度も以前と変わっておらず、給水が多ければよい訳ではないことが実証できた。滴下式でも少ない給水量で湿度は維持できるのだ。

11・12月は前年比で上水使用量が6.9%も増えていたが、加湿チューニング後の2・3月は12.6%も減り、かなりの節水効果があった。熱は前年度の2・3月と比較して4%減であった。前年よりもかなり寒い年であったが、これも加湿チューニング効果なのであろう。