ビルの省エネ指南書(8)

ビル内気圧のチューニングポイント〔其の3〕
排気ファン(2)

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
      室長 中村 聡

4、福祉プラザの排気ファン
 福岡市社会福祉協議会の福岡市市民福祉プラザには個室等に20台以上の排気ファンが備えられており、その多くが運転状態であった。
 各階中央にあるホールの排気ファンも運転していたが、直ぐ近くにはトイレがあり、当然にトイレの排気ファンも運転している。
 このホールは多くの人が常時滞在する場所でもないのでCO2濃度が上がるとも思えない。つまりトイレからの排気だけでも十分に換気が可能なのだ。このような場所も含めてトイレ以外の排気ファンを試しに全部停止させて様子をみることにした。勿論、承諾を得たうえである。
 その後、やはり匂いがするからとか、熱気がこもるからということで数台の排気ファンを運転することになったが、殆どの排気ファンは今も停止したままである。これで外気負荷はかなり減少したはずであり、電力も削減できた。

5、地階駐車場の排気ファン
 地下の駐車場ならば必ず排気ファンがあるだろう。CO2等の自動制御をおこなっていれば不必要な排気ファンの運転はしないだろうが、ビルによっては全ての排気ファンを常時運転しているところもあるようだ。このようなファンをスケジュール運転により交互運転や間欠運転をして省エネをおこなっているビルも数多くある。
 地下駐車場への車進入路から排気口までの経路に応じた、効果的な換気経路を考えた排気が行えるようにしたい。 排気ダクトの煙突効果で自然排気ができる可能性もあるので、排気ファン停止中に吸気口の気流を確認することも忘れてはならない。排気ファンを運転しなくても排気できるならば、これほど効率的な排気はない。

6、バッテリー室の排気
 排気ファンでCO2を排出するのか、COや水素ガスなのかで排気の調整も違ってくる。
バッテリー室のように冷房と給気と排気を24時間おこなっているような部屋の排気量は給気量よりも若干多くして、僅かな負圧状態に保っておけばよい。バッテリーを冷やすための空気は排出せず、熱気と水素ガスが溜まる天井面だけで給排気をおこなう程度の排気でよい。
 必要以上の排気をおこなえばせっかく冷やした空気を無駄に捨てることになるので、排気量が多過ぎてはならないのだ。
冬季は外気冷房が可能となるが、それでも必要以上の排気は無駄である。給気量より若干多目の排気量が基本である。

7、厨房の排気
 食堂や飲食店があれば厨房があり、厨房には必ず給排気ファンがあるだろう。
厨房内は若干の負圧であればよいが、給排気ファンのバランスが悪く、排気量の方が極端に多ければどうなるだろうか。空気は気圧の高いところから低いところに流れるのだから、ビル全体の空気を引っ張ることも考えられる。
 福岡市総合図書館もレストラン厨房の排気量が多過ぎて、レストラン入口から客席を通ってかなりの量の空気が厨房へ流れ込んでいた。図書館内の空気を引っ張っているのだ。そこでレストラン入口の気流をみながら、厨房の給気ファンのダンパーを開いて給気量を増やし、入口からの流入が少なくなるように調整した。厨房自体は冷房効果が少なくなるかもしれないが、客席は逆に冷房効果が高くなり、図書館全体としても外気負荷が減るので省エネになる。
 排気ダンパーの調整はしなかったが、排気量が多過ぎると判断できれば、給気量だけではなく排気量を調整してもよいだろう。勿論、酸欠にならないように注意しての話である。
食堂のあるビルは、厨房の給排気バランスには十分に注意をしていただきたい。