ビルの省エネ指南書(7)

ビル内気圧のチューニングポイント〔其の3〕

排気ファン(1)

東洋ビル管理株式会社 
省エネルギー技術研究室
    室長 中 村  聡

1、排気の必要性と省エネ性
 排気はビル内が負圧となり、冷暖房時ならば外気負荷が増える最大の要因だ。冷房時に温度の低い空気を排出すれば、同量の外気が侵入してくるために外気負荷となるが、冷房中であっても、こもった熱気を排出する場合ならば省エネになる。
 中間期の外気冷房中ならばビル内の空気を積極的に排出して外気導入量を増やしたほうが、外気冷房効果が高くなり省エネになる。
 排気の必要性と省エネ性を考えながら、不必要な排気ファンを運転していないか、必要な排気をおこなっているかを確認してみることがビルの省エネには大切だ。

2、必要な排気
 何故、排気が必要なのかを考えてみると。
 ・臭気
 ・熱気
 ・CO2
 一般的なビルならばこの3つが主因である。
トイレは臭気を排出しなければならないので排気ファンは必要である。しかし、人のいない時間まで運転する必要はない、運転時間をどこまで短縮できるかを考えたい。
 食堂のあるビルならば厨房では臭気と熱気とCO2の全てを排気しなければならないが、火を使っていない時は排気する必要がないので、厨房の給排気ファンは停止させてもよい。
 ガスを使う湯沸し室ならば熱気とCO2、電気を使う湯沸し室ならば熱気だけが排気の対象となる。このような湯沸し室は湯沸し中だけ排気すればよく、湯沸し時間も朝・昼の就業時間外だけに限定することもできるだろう。電気給湯器ならば電気デマンド対策ともなる。
 在室者が多く通常の空調だけではCO2濃度が高くなる部屋ならば排気が必要となる。
 満室の会議室などが該当するだろうが、いつも満室とは限らないので排気ファンの運転は必要に応じておこなえるようにしたい。
 熱源機械室も排気は必要だが、空調区画とは完全に隔離されているので問題はないだろう。
 エレベーター機械室は空調区画と繋がっており熱気を排出しているので、7・8月号で説明したように、状況に応じた対応をすればよい。
 地下駐車場は空調区画とも繋がっているが、臭気、熱気、CO2の全てに関係しているため、排気ファンを停止させることは難しい場所だ。CO2制御があればよいが、無ければ間欠運転、複数台の排気ファンがあるのならば交互運転などをおこなって排気量を少なくし、空調区画内の空気を引っ張らないようにしたい。
 問題はこれらのどれにも当てはまらない場所の排気ファンだ。例えば臭いも熱気も無い倉庫、人のいない部屋や在室者が少なくCO2濃度が低い部屋。廊下やホール等の共用部分。
 このような、排気ファンを運転しなくても問題のない場所であるにもかかわらず、排気ファンを運転していないだろうか。外気冷房効果を高めることが目的ならばよいのだが、冷暖房中の空気を、電気を使ってまで排気する必要はない場所であり、このためにビル内が負圧となれば外気が侵入して外気負荷となる。外気負荷を減らすにはOAを少なくするのではなく、EAを少なくするということを忘れてはならない。

3、排気ファンの停止
 現在運転中の排気ファンがビル内に何台あるのかを確認して、臭気、熱気、CO2に問題がないと思われる排気ファンを一度停止させて様子を見ることを勧める。その結果、どうしても臭気や熱気がこもるという場所の排気ファンだけを運転させればよい。多分、殆どの排気ファンは停止させたままでも何ら支障はないはずだ。