ビルの省エネ指南書(24)

空調機のチューニングポイント〔其の6〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

不快指数冷房(1)
1、冷房とは
冷房とは温度を下げることだと思っている人が多いのではないか。
しかしここで、冷房とは温度を下げることではなく、空気のエネルギー量を下げることだと思うように頭を切り替えてはどうだろうか。そうすれば新しい冷房の仕方が見えてくるだろう。
この空気のエネルギーがエンタルピである。
エンタルピは温度だけではなく湿度にも関係してくるので、湿度のコントロールが重要となる。
不快指数冷房は温度と湿度と不快指数とエンタルピを総合的に考え、エンタルピをできるだけ下げないようにしながら、不快指数を下げるように温度と湿度をコントロールして、省エネと快適性を両立できるようにすることがポイントなのだ。温度だけを基準にする冷房ではないのが、不快指数冷房の特徴である。
2、湿度制御
一般的な空調機ならば冷房時は温度を制御するだけで湿度までは制御していないだろう。冷房で湿度を制御するのは、電算室や保存庫などの恒温恒湿の部屋ぐらいであり、居室よりも低い温度の場所であることが多いだろう。
暖房時ならば加湿をして湿度を維持するということも可能である。設定湿度になるまで加湿を続ければよいのだが、外気導入量が多くて外気が乾燥しているとなかなか設定湿度にならないことがある。特に温度と湿度の設定値が高い場合はそうだろう。温度が高いと相対湿度が低くなり、湿度の設定値までが高いと、絶対湿度をかなり高めなければならなくなるので、いくら加湿をしても追いつかないのだ。
湿度が追いつかないのならば室温を上げるように自動制御できれば室内空気のエンタルピは保てるが、そのような温度制御ができる空調機はないだろう。よって室内は設定湿度よりも低い湿度になり、室内エンタルピも一定に保つのは難しくなる。
冷房の場合は暖房とは逆に除湿となるので、除湿量をコントロールするのがさらに難しい。
暖房のように温度と湿度を個別に制御できるならばまだやりようがあるが、冷房の場合は温度の制御だけで、制御をすることができない湿度まで制御しなければならないからだ。
3、不快指数と省エネ
冷房温度は28℃にするようにといわれているが、28℃では暑いので湿度を下げて快適にするというビルもあるだろう。つまり温度を下げる代わりに湿度を下げて快適性を維持するという方法である。果たしてこの方法が省エネになるのかを、省エネの観点から考えてみたい。
冷房するということは除湿するということでもあるので、湿度を下げることはできるだろう。
しかし温度を28℃に保ったまま湿度を下げたときのエンタルピはかなり低くなる。冷房が空気のエネルギーを下げることだとすれば、エンタルピが低くなるということは冷房のエネルギーを多く使うことにもなる。湿度を下げるだけでもエンタルピが下がるので、快適にはなっても省エネにはならないのだ。
4、不快指数の計算方法
不快指数とは体感的な温度を数値にしたもので、計算方法が何通りかある。
空気環境測定時に湿球温度を測定しているのならばこの式を使えば計算が簡単だ。

不快指数=0.72×(乾球温度+湿球温度)+40.6

相対湿度しか分からない時は、少し計算が長くなるが下の式のどちらかを使えばよい。

不快指数=0.81×温度+0.01×相対湿度(0.99×温度-14.3)+46.3

不快指数=1.8×温度-0.55(1-相対湿度/100) ×(1.8×温度-26)+32