ビルの省エネ指南書(30)

照明のチューニングポイント〔其の1〕

東洋ビル管理株式会社
省エネルギー技術研究室
室長 中村 聡

照明のチューニングポイント(1

業種にかかわらず最も多くのビルでおこなった省エネ対策が照明関連だろう。簡単にいえば照明の場合は消すか器具を交換するしかないので分かりやすい。省エネチューニングをするといっても、照明器具の取り付け位置や器具自体を何度も変更するわけにはいかないので、点灯時間をいろいろと変えてみるか消灯個所を増やすぐらいである。

次に照明対策について考えてみたい。

1、消灯率と来客率

近所の食品スーパーに立ち寄ると、照明の間引きで店内が薄暗く、この店は余程経営が苦しいのだなと思ったことがある。その時はまさか節電のためだとは思いもしなかったのだ。

40Wの蛍光管を100本消しても4kWにしかならない。電気代を平均単価で計算しても1時間で60円程度であろう。

しかし店内は100本も消すとかなり暗くなってしまうし、100本も消せる食品スーパーは、かなり大きな店舗である。

消灯率と来客率も無縁ではないだろう。消灯率を高くすれば来客率が下がってくるだろうことは想像できる。実験データはないが、半分消灯しても来客数が以前と全く変わらないとは思えない。必ず来客数が減り、売上げは下がるはずだ。

勇気のあるスーパーは消灯率を10%ずつ増やしていき、来客率がどのように変化するのか、最後は全消灯状態まで実験してほしい。興味のあるデータが集まるとは思うが、実施は不可能であろう。現実的に30%の消灯も難しいかもしれない。

2、消灯場所

40W蛍光管100本の消灯で僅か60円/hを節約してもお客が一人減れば差引マイナスであろう。

お客が減れば商品の回転も悪くなる。悪くなれば商品が古くなる。古くなるから陳列数を減らす。

薄暗くて陳列商品の少ないスーパーに誰が行くだろうか。店内を暗くする消灯とは、悪循環の始まりなのである。

食品スーパーは出入口側が一面ガラス張りの店が多い。コンビニの場合もそうだ。しかしどうせ消灯をするならば、外光の入らない店の奥ではなく、外光が入るガラス面近くを一列全て消灯したほうがお客の理解も得られやすい。店の奥では一列全てを消灯する訳にはいかないので、飛びとびの消灯となるが、これは見た目が悪い。暗いので上を見ると蛍光管を取り外した器具が目に入るのだから当然だ。しかしガラス面近くの一列全てを消灯すれば、節電のためだと一目で分かる。外光が入る場所ならば照明が無くても気にならないし、このような場所には商品自体がそれほど並んでいないので、多少暗くても不便は感じない。ただし外が暗くなって来ると点灯させることを忘れてはならない。

3、装飾照明

照明にも照度を確保するための照明と、飾りの照明がある。外から見えるガラス面近くにこのような大して役にも立たない照明が設置されているスーパーもある。店内の柱や壁にも飾りの照明が見受けられる。このような店内の照度に殆ど寄与しない照明ならば、消灯していても違和感はない。

これが電球ならばW数の小さなものに換えるだけでもよい。飾りの照明なので点灯さえしていれば、明るさがどうのというお客はいないであろう。

4、LED

最近はLED照明がよく使われるようになってきた。次々に改良されたLED照明が出て来るので、換え時が難しいが、照明は発熱も多いので、冷房主体の食品スーパーには消費電力の少ないLED照明は最適だろう。

問題は生鮮食料品が並ぶ場所にあるスポット照明である。これらにはハロゲン系統の電球が使われることが多いが、これらの電球もいずれLEDに置き換わるだろう。電球の明かりにこだわる人もいるが、電球なので口金サイズさえ合えば簡単に交換することもできる。今すぐ全てを同時に交換する必要はないが、1か所だけでもLED電球に交換して、今後の計画を立ててみるべきだろう。

電球の明かりにこだわることは止めたほうがよい。