ビルクリーニング技能士までの変遷

公益社団法人 福岡県ビルメンテナンス協会
副会長 古賀 修

 昭和45年に制定された「建築物衛生法」により、建築物の維持管理に関する法制度の整備と技術的職務を担う建築物環境衛生管理技術者による管理基準の遵守体制は確立されたが、業界における清掃等に関わる技能教育制度については、不十分な点が多かったように思われる。
 大阪万国博覧会開催時には、会場等の清掃管理業務を全国から集まった技術者たちが協同で行い、そこで経験したビルクリーニングをはじめとする管理技術を全国へ普及しようとする気運が高まった。また、ビルメンテナンス業種を確立し、社会的な意義と責任を果たすためには、維持管理業務に携わる従事者の技能水準を上げ、全国のレベルを均一化することが急務との考えで業界が実施する認定職業訓練の具体化を図ることになった、と聞いている。
 このような背景の中で、教育訓練を推進する機関として、昭和48年に財団法人建築物管理訓練センター(以下「訓練センター」という)が設立され、訓練実施体制においても、職業訓練指導員免許を取得した指導員の確保と必要なテキストを作成することとし、整備されていったのである。
 こうして、昭和50年より訓練センターは、ビルクリーニングに関する現場の監督者として必要な知識及び技能について能力再開発訓練を開始した。その訓練内容は専門学科、基本・応用実技からなり、通信訓練における土台となっている。この時の訓練修了生(116名)は、「技士補」となり、昭和52年から実施の「技能審査」を目指した。
 この技能審査は、従事者の技能と社会的地位の向上を図るために、労働大臣が認定した試験制度であり、審査に合格すれば「ビルクリーニング技士」の資格を得、今日における技能検定制度の骨格が形成されたことになる。昭和57年までに誕生した技士の全国総数は、5,997名(九州地区556名、福岡県204名)である。
 また、社会的認知を得るために技能審査を継続した結果、「ビルクリーニング」は技能検定の単一等級とされ、技士は昭和61年までに補足講習を修了して技能士へと移行していった。
 この後、技能検定は全国協会が地区毎に毎年実施し、平成21年度までに技能士を取得した全国総数は、45,423名(九州地区3,689名、福岡県1,410名)となっている。
 このように「技能士制度」を取り入れたことにより、従事者に対して技能取得意欲を増進させ、資質の向上と業界全体の社会的高揚を図ってきたのである。
 一方、建築物の高度化に伴い、建築物の内外装材も多岐にわたっており、十分な知識と技能を兼備した技能士が必要とされている。
 従って、技能士には資格取得が最終目標ではなく、進化するビルクリーニングに対応すべく一層の自己啓発に努められ、企業における技能集団の一員であると同時に、教育訓練指導者としても活躍の場を広げていただきたいと願っている。